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広島高等裁判所 昭和52年(行コ)6号 判決

山口県下関市石神町八の三一

控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)

中尾勇

右訴訟代理人弁護士

葛井重雄

葛井久雄

同県同市山の口一番一八号

被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)

下関税務署員

戸出由己

右指定代理人

一志泰滋

高田資生

吉川定登

杉田泰啓

安永功

右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴、同附帯控訴事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。

控訴審の訴訟費用は各自の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決中、控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人が昭和四一年一一月三〇日付で控訴人に対してなした昭和三七年ないし昭和四〇年分各所得税更正処分につき、広島国税局長の裁決により取消された残余の部分中の総所得金額のうち、昭和三七年分の四五七万七〇一六円、昭和三八年分の六九五万一四六八円、昭和三九年分の二九九万一一九二円、昭和四〇年分の三五六万五九一三円を取消す。訴訟費用は第一、第二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、附帯控訴として「原判決中、被控訴人敗訴部分を取消す。控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求め、控訴人は、附帯控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり附加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し、原判決四枚目表一一行目の「益金として加算した」を「否認したものである。」と、同六枚目裏二、三行目の各「売掛残高」を「買掛残高」と各改める)。

(証拠関係)

控訴人は、当審証人勇次勝太郎、同大和正二の各証言及び当審における控訴人本人尋問の結果を援用し、後記乙号各証の成立は不知と述べ、被控訴人は、乙第五二号証の一、二、第五三号証を提出し、当審証人土山幸治、同紺野三男、同岡田安央、同中津山準一の各証言を援用した。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は、原判決認容の限度で理由があるが、その余は、理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

(一)  原判決一七枚目表一一行目の「これを」の次に「一二〇〇円ないし」を、同一八枚目表六行目の「高島屋店における」の次に「控訴人からの仕入以外の」を各加え、同末行の「計理」を「経理」と改め、同一九枚目表六行目と七行目の間に次のとおり加える。

(4) してみると、控訴人は、高島屋店の関係で、原判決添付別表四の差引売上除外金額欄記載の金額にかかる売上除外をしていたものと認められるから、被控訴人がこれを各期の売上に加算したのは相当であつて、なんら違法ではない。

(二)  同一九枚目表一〇行目の「あること」の次に「及び右丸兼水産の仕入記帳額に照応する原告名義の取引がなされたこと」を加え、同一一行目から同二〇枚目表六行目までを次のとおり改める。

(2) 控訴人は、右差額は、勇次が控訴人の口座を利用して丸兼水産と行つた売上によつて生じたものであると主張し、その証拠として、勇次が控訴人の取引口座を利用して丸兼水産と取引した金額を記載した勇次作成名義の証明書(甲第二一号証)を提出し、原審及び当審における本人尋問において右主張に副う供述をしている。しかしながら、当審証人勇次勝太郎の証言によれば、勇次は、控訴人に遠洋物のフグを卸していたが、控訴人より、控訴人が勇次からフグを仕入れた事実を証明してほしい旨依頼されてこれを承諾し、白紙に署名捺印して控訴人に交付したところ、控訴人において勝手に右白紙を利用し前記のとおり勇次が控訴人の口座を利用して丸兼水産と取引した金額を証明する旨の甲第二一号証の証明書を作成したことが認められる(これに反する原審及び当審における控訴人本人の供述は措信できない。)から、甲第二一号証は、控訴人の前記主張事実を支持する証拠として用いることはできない。また、右勇次の証言、原審証人今村隆の証言により真正に作成されたものと認められる乙第三八号証の一、二によれば、勇次は、控訴人の口座を利用して丸兼水産と取引した事実のないことが認められ、前記控訴人本人の供述は、措信し難い。他に控訴人の前記主張事実を認めるに足りる証拠はない。

(3) 以上によれば、控訴人は、丸兼水産に対する関係で、原判決添付別表五の差引売上除外金額欄記載の金額にかかる売上除外をしたものと認められるから、被控訴人がこれを各期の売上に計上したのは相当であり、なんら違法ではない。

(三)  同二一枚目表五、六行目の「妨げるものではない。」の次に「当審証人岡田安央の証言、同証言により真正に作成されたものと認められる乙第四一号証、当審証人紺野三男の証言、同証言により真正に作成されたものと認められる乙第四八号証の一、二、弁論の全趣旨により成立を認める乙第四九号証、当審証人土山幸治の証言、同証言により真正に作成されたものと認められる乙第五〇号証は、前掲各証拠に照らして採用し難い。」を加え、同六行目と七行目の間に「従つて、新田愛に対する関係で、控訴人に被控訴人主張のような売上除外があつたものということはできないから、被控訴人が前記仕入記帳額と売上記帳額との差額を売上に加算したのは違法である。」を挿入する。

(四)  同二一枚目表一〇行目「であること」の次に「及び右矢向の仕入記帳額に照応する売上が一旦なされたこと」を、同裏四行目末尾に「してみると、控訴人は、矢向に対する関係で同別表の同人欄の差引売上脱漏額欄記載の金額にかかる売上除外をしたものと認めるのが相当であるから、被控訴人がこれを各期の売上に加算したのは相当であつて、なんら違法ではない。」を各加える。

(五)  同二一枚目裏八行目の「原告の営業の」の次に「簿外の」を、同二二枚目表一〇行目冒頭の「とについては、」の次に「原審及び当審における」を各加え、同二三枚目表三行目と四行目の間に次のとおり挿入する。

以上によれば、竹本名義の預金は、他の架空名義の預金と同様、控訴人がその事業による簿外の売上金を預け入れたものと認めるのが相当である。

(3) そうすると、控訴人は、原判決添付別表七記載の架空名義預金の預入額にかかる売上除外をしたものと認められるから、被控訴人がこれを各期の売上に加算したのは相当であつて、なんら違法ではない。

(六)  同二三枚目表七行目の「四二」を「五八」と改め、同一〇行目の「証人」の前に「原審及び当審」を、同裏二行目冒頭の「九、」の次に「同第三〇ないし第三三、」を各加え、同二四枚目表二行目の「また」から同三行目までを削除し、同裏初行末尾に次のとおり加える。

従つて、東京店の所得は、控訴人に帰属するものと認めるのが相当であり、控訴人は、原判決添付別表八記載の所得金額欄記載の金額にかかる東京店の売上を除外していたものであるから、被控訴人がこれを各期の売上に加算したのは相当であり、なんら違法ではない。

(七)  同二五枚目表四行目の「加算すべきである。」の次に「成立に争いのない乙第一号証の一四、原審証人今村隆の証言及び」を、同七行目末尾に「そうすると、控訴人は、昭和四〇年のポン酢取引に関し右加算額にかかる売上除外をしたものと認められるから、被控訴人がこれを売上に加算したのは相当であつて、なんら違法ということを得ない。」を加える。

(八)  同二五枚目表末行の「応接接待費」を「応答接待費」と改め、同二六枚目表初行の「これに対し」の次に「原審及び当審における」を加える。

二  よつて、原判決は相当であり、本件控訴及び附帯控訴は、いずれも理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九二条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 胡田勲 裁判官 土屋重雄 裁判官 高升五十雄)

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